海邦銀行サッカー部について
まずは、今回出張トレーニングの機会をいただいた海邦銀行サッカー部(海邦銀行SC)についてご紹介します。
海邦銀行サッカー部は、沖縄県を拠点に活動する歴史ある社会人サッカークラブです。これまで「九州社会人サッカーリーグ」など高いステージでの戦いを経験し、現在は再びその舞台、そしてさらにその先へ返り咲くため、「九州社会人サッカーリーグ昇格」という明確な大目標を掲げて日々熱い戦いを繰り広げています。仕事とサッカーを高いレベルで両立させ、地域に感動を届ける、沖縄を代表する歴史ある社会人チームの一つです。
出張トレーニングに向けて【私が大事にしていること】
今回の出張トレーニングにあたり、私が大前提として、そして何よりも大切にしているマインドについて少しお話しさせていただきます。ここのマインドセットが揃わなければ、決して良いトレーニングにはならないと私は考えているからです。
社会人選手たちは、それぞれの仕事を持ち、朝から職務を全うした上で夜の練習場に集まります。指導者として、まずその背景に対する深いリスペクトを持つことがスタートラインです。その上で、海邦銀行サッカー部が「九州社会人サッカーリーグ昇格」という明確な大目標を達成するために、どのようなモチベーションで日々のトレーニングに臨むべきか。
私自身、これまで育成年代から社会人、プロフェッショナルまで、異なる環境で戦うさまざまな選手たちと向き合ってきました。その経験から確信している一番の要素は、やはり「メンタリティ」です。
特に社会人選手は、家庭のこと、会社のこと、日々さまざまな出来事や責任がある中でサッカーをしています。そんな背景を抱えながら、ピッチの上では心身に高い負荷をかけ、プレイしなければなりません。だからこそ重要なのが、『今日の自分のコンディション』を正しく理解し、受け入れながら取り組むことです。
選手たちには、『自分に矢印を向けること』という言葉で伝えました。 「今日、うまくいかないからダメ」なのではありません。一番大切なのは、「今日の自分の状態を理解した上で、その中でも“+1(プラスワン)”の努力をすること」です。
たとえば、腕立て伏せを10回行うトレーニングがあるとします。今日のコンディションでは本来8回しかできない状態だったとしても、「あと1回、食い下がろう」という意識を持って9回行うこと。これが私の考える“+1”です。
今日の自分の全力を尽くした、その先の“+1”を意識し続けることが、個人の確実な成長につながります。
そのような個々の意識が集まれば、目標に向かってピッチ内だけでなくピッチ外でも多くの「気づき」が生まれるようになります。
◾️ピッチ上の気づき:相手の変化にいち早く気づき、勝つための行動ができる。
◾️ピッチ外の気づき:仲間の変化、チームの変化に気づき、勝つための行動ができる。
全員がこの考えを共通認識とすることで、限られた時間の中でも非常に良いトレーニングになると思います。
今回の出張トレーニングでも、このマインドを選手たちに伝えさせていただきトレーニングを行いました。
出張トレーニングのテーマ
今回の大きなテーマは、「九州社会人サッカーリーグ昇格という明確な大目標に向け、個人戦術からチーム戦術へのアプローチを行い、うまくいかなくなったときに立ち返る“きっかけ(基準)”を作ること」です。
この限られた期間だけで急激な魔法のような成長を望むのではなく、個人として、チームとして、これまでの取り組みを整理し、今後の道標となるきっかけにしてもらうための指導を心がけました。
1. メンタルテーマ
通過点としてのリーグ戦と「+1の強度」
すべては1月に控える昇格戦で勝つために逆算されています。日々の基準を「今」の心地よいレベルに合わせるのではなく、常に「自分のコンディションを理解し、もう一歩上の強度(+1)」を追求することを求めました。
主体的なコントロールと他者理解
社会人として、あるいは一人の人間として、サッカーのために「何かを犠牲にして時間を作っていること」を自覚することによって、それを言い訳にせず自分でメンタルや体力をコントロールする力を求めました。さらに、自分のことだけでなく「仲間のコンディション」にも目を配り、互いを理解し合える強い集団(=真に強いチーム)を目指します。
2. 戦術的テーマ
事前に数試合のスカウティング映像を拝見し、チームスタッフの方々とミーティングを重ねて事前に課題を明確化し、その上で設定したのが下記の戦術テーマです。
※現在リーグ戦の期間中であるため、戦術の深い詳細内容についての記載は控えさせていただきます。
【攻撃】背後を取るための「観る」優先順位の確立
なんとなくパスを出すのではなく、①自身の立ち位置、②動くタイミング(仲間との打ち合わせ)、③相手のポジションニング、④プレッシャーの矢印、⑤ランニングの質、という明確な優先順位を整理すること。そして、「観るタイミング」を明確にしました。あわせて、ゴール前での崩しのパターンをチーム・個人の両面で共有。
【守備】ポジショニングのスピードとプレスの強度
ボールホルダーに対してファーストディフェンダーがアプローチするタイミングとスピード、およびセカンドディフェンダーが連動してすることの徹底。プレスの「質(奪う時の強度)」
スケジュールに沿って内容を説明


4日間にわたる、具体的なトレーニングと練習試合のプロセスを振り返ります。
■ 1日目:トレーニング(TR)
日時:5月19日(火) 20:00〜22:00
会場:浦添小学校
テーマ:自己管理の意識改革と戦術の全体像の共有
初日は、全てのベースとなる「メンタリティとコンディションへのアプローチ」からスタートしました。
1月の昇格戦から逆算した「+1の強度」の重要性を共有。社会人として限られた時間を言い訳にせず、自らのメンタルと体力を主体的にコントロールすること、そして仲間の状態にも目を配り、互いを理解し合える「真に強い集団」になろうと熱量を持って伝えました。
その後、明確な意図を持った「個人戦術の共有」へと移行。
初日から非常に引き締まったトレーニングを展開しました。
■ 2日目:トレーニング(TR)
日時:5月20日(水) 20:00〜22:00
会場:沖縄県総合運動公園蹴球場(人工芝)
テーマ:ボール保持からゴール(背後)への直結
2日目は会場を変え、より実戦に近い形へ。個人戦術からチーム戦術への共有を進めました。
この日は「ボールをただ保持する為にどのように相手からプレッシャーを受けるのか」「どこをどのタイミングで観ることで相手が変化し、ボールを保持するのか」を整理、確認いたしました。また、守備では、ボールを奪うための原理原則を整理してトレーニングを行いました。

■ 3日目:トレーニング(TR)
日時:5月22日(金) 20:00〜22:00
会場:沖縄県総合運動公園蹴球場(人工芝)
テーマ:ゴール前の崩しのパターン練習
3日目は、トレーニングの焦点を「ゴール前の崩し(クロス・シュートイメージ)」に完全特化いたしました。背後へのスペースを作るためにどのように相手からプレッシャーを受けるのか、そして、空いたスペースにどのような配給、ランニングのタイミングや入り方をチーム全体で深く理解し、共有することに時間を費やしました。
■ 4日目:練習試合(Tr-M)
日時:5月24日(日) 9:00 Kickoff(45分×3本)
対戦相手:沖縄国際大学
会場:沖縄国際大学グラウンド
テーマ:これまでのトレーニング成果と課題をトライすること
実は、この4日目の練習試合を前日に、選手たちへ以下のようなメッセージを送りました。
社会人選手たちが抱える多様な環境への理解と、心からのリスペクトを伝えることが、チームが一つになるために必要不可欠だと考えたからです。
【試合前、選手たちへ送ったメッセージ】
「選手のみなさん お疲れ様です。
3日間のトレーニング、積極的に取り組んでいただきありがとうございました。
みなさんのサッカーに対する圧倒的な熱量には、本当にリスペクトしかありません。
ここで、みなさんの貴重な時間を少しだけいただきたく、一つお願いがあります。
『この3日間で行ったトレーニングを、頭の中で少しだけ整理してからグラウンドに来てください』
事前に頭の整理をしておくことで、ミーティングの理解が深まります。それがチームの「共通認識」となり、ピッチ内でのトライ&エラーに対して瞬時に適応できる力へと繋がります。
貴重な休日のところ負担をかけてしまい申し訳ありませんが、少しだけ時間を作ってもらえると嬉しいです。
また、今回は様々な事情で練習に参加できなかった選手もいるかと思います。
社会人サッカーというのは、仕事、家族、学校など、それぞれ色々な背景を抱えながら取り組むものです。時にはメンタル的にしんどい時だってあります。
私たちはそれをしっかりと理解し、選手同士が互いをリスペクトしながら活動することを大前提として考えています。
ですので、今回練習に参加できなかったメンバーに対しても、ネガティブな感情は一切ありません。上記の「頭の整理」ができなくても全く問題ありませんので、安心してください。
明日の試合前のミーティングや試合中の時間を通して、またたくさんコミュニケーションを取らせてもらえたら嬉しいです。朝早いですが、みんなでいい顔をして会いましょう!!」
このメッセージを経て臨んだ練習試合では、以下のようなゲームプランを設定しました。
ゲームプランとメンタルの設定
朝早いゲームというシチュエーションを、将来戦うことになる「九州大会(高い緊張感とタフなスケジュール)」のシミュレーションと位置づけ、高いモチベーションを保つこと。
相手の矢印を見る
的確に相手の出方(矢印)を観察し、メンタルと体力をマネジメントしながら、「+1の余裕」を持ってゲームをコントロールすること。
ポジティブへの転換
難しい展開になっても「一人で過ごさず」、ピッチ内外で声を掛け合い、ネガティブな空気をポジティブに変えること
戦術面での攻守の優先順位
攻撃では「背後へのランニング」と「相手の変化を観ること」。
守備では「ファーストディフェンダーの決定とコーチング」「強度と奪うエリアの共有」。
総括と今後の方向性
沖縄国際大学との練習試合は、結果だけを見れば、理想とするスコアを得ることはできませんでした。
しかし、これは「昇格に向けたチームとして、個人への戦術の共有」というプロセスにおいて、現在地を知るための極めて重要と捉えています。
トレーニングで取り組んできた「背後を観る優先順位」や「プレスの強度」が、相手に対してどれだけ通用し、逆にどこで剥がされてしまったのか。
それが実戦を通して明確になったことこそが大きな収穫だと思っております。
「うまくいくはずがない時間帯」に、いかに全員が同じ基準に立ち返り、どう頭を整理して立て直すか。
今回突きつけられた課題(ゲームコントロールの質、失点後のメンタルの持ち直し、ゴール前の強度)を、次からの日々のトレーニングで一つずつクリアしていくことが重要になります。
それこそが、チームとして掲げる「九州社会人サッカーリーグ昇格」という明確な目標への、最も確実な近道になると思っております。

海邦銀行サッカー部の皆様へお礼
海邦銀行サッカー部の選手、スタッフ、関係者の皆様、今回は4日間という貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。
短い時間でしたが、皆様と共に高い熱量で過ごした時間は、私にとって大切な宝物です。
日々の生活や仕事の責任を果たしながら、ピッチの上で一切妥協せず上を目指す皆様の姿に、私自身も大きな刺激をいただきました。
「今の自分」を受け入れ、そこから一歩踏み出す「自分に矢印を向けること」。
この積み重ねの先に、必ず2027年1月の歓喜が待っています。
今シーズン、皆様が目標を達成することを心から応援しております。また機会があれば、ぜひグラウンドに顔を出させてください。本当にありがとうございました!
【出張トレーニング・チーム指導のご案内】
N2+(エヌツープラス)では、プロ・アマ、カテゴリー(育成年代〜社会人トップチーム)を問わず、サッカーチーム・クラブを対象とした「出張トレーニング・短期集中指導」のご依頼を随時募集しております。
「チームの戦術的な『基準』を明確に落とし込みたい」
このような課題をお持ちのクラブへ向けて、事前ミーティングや過去の試合映像の分析をもとに、チームスタッフの方々と深く連携したオーダーメイドのトレーニングプログラムを構築いたします。
「大会や昇格に向けて、選手たちのメンタリティやインテンシティ(強度)を引き上げたい」
「限られた練習時間の中で、選手が主体的に伸びるマインドセットを植え付けたい」
指導のご依頼、費用やスケジュールのご相談、その他詳細なお問い合わせは、下記フォームまたはメールリンクよりお気軽にご連絡ください。皆様のチームの「+1」の成長と、目標達成を全力でサポートいたします。
